この記事は初めて流氷ダイビングに行く人にオススメです。
いつもの自分でいることの難しさを知った。
水温-1.6℃、気温-8℃あらゆるものが凍る極限の世界が知床半島ウトロの流氷ダイビングです。
流氷ダイビングは今までしてきたすべてのダイビングとまったく異なる。
刻一刻と体温の奪われる環境では事前準備と手際の良さがものを言う。
慣れない装備に手間取ったり、ハウジングが凍結したり、思わぬトラブルが起こることもあります。
そんな極限の環境を乗り越え、海の中から流氷を見上げた時の美しさは声を失うものがありました。
そして流氷のアイドルといえばクリオネ!
流氷の下をパタパタと羽を広げたように泳ぐ姿はまるで天使のよう。
決して誰でも簡単にいける場所ではない。
アイスダイビングに対する知識やスキル、装備、そして何より強力なバックアップが必要だ。
ロビンソンダイビングサービスさんの強力なサポート、ガイドのおかげで初めての流氷ダイビングを楽しめる。
1つ1つの動作にプロの仕事を感じ、安心して流氷下の素晴らしい光景の撮影に望むことができた。
感謝してもしきれません。
流氷ダイビングの魅力
流氷ダイビングの1番の魅力はやはり流氷の作り出す造形美でしょう。
分厚い流氷の影のと薄い氷から差し込む光のコントラストが芸術のような美しさ。
また流氷に含まれる養分やできた場所によって色が変わって来て綺麗なブルーからグリーン、硫黄のような黄土色など様々な表情を魅せてくれます。
しかもこの流氷がこの形この光で見れるのは今一瞬だけなんです!
流氷は風にや潮の流れによって絶えず微妙に形を変えていきます。
しかも天気も変わりやすく1日を通して晴れたり雪が降ったりすることがあります。
同じポイントに明日潜っても全く違う景色になってしまっていることも。
まるで生き物のように刻々と姿を変える今しか見れない光景。
そのダイナミックさと儚さを兼ねそろえているも流氷ダイビングの魅力かもしれません。
流氷の下から見上げる空も本当に美しいです。 海表面は流氷から溶けた淡水と海水が混じり合うハロクラインがあり、ゴニョゴニョとした蜃気楼のような様子になります。
また流氷に空けた穴もすぐに薄く氷の膜が出来てしまうため、くっきりは見えずボヤけた感じに。
このモヤ感にさす光が柔らかくて心地よい。
ちなみに写真の下に写っているのは陸上のサポートスタッフの方です。
常にこうやって見守ってくれているので安心してダイビングが楽しめますね!
他にも知床といえば昆布が有名。 ウトロとは反対側の羅臼昆布といえば高級食材ですね!
そんな昆布と流氷のコラボレーション!
きっとこの流氷が溶けて豊富な栄養が流れ出すと今度は逆に昆布たちがこの海を埋め尽くして全く
異なる水中景観を作っていくんでしょう。
春の知床半島でもダイビングしてみたくなりました。
他にもキタユウレイクラゲというちょっと変わった動きをするクラゲにも出会いました。
流氷の背景がよく似合う北の海らしい生き物。
そして同じく中層に目をやると流氷のアイドルクリオネも!!
大きさは約1センチ前後と動き回るので撮影は結構大変です。
浮遊系のように背景を暗く落として撮るのは比較的撮りやすいですが、やっぱり流氷の爽やかな青を入れたいとなると結構難しい。
こんな極寒の海の限られた時間で見つけるなんてホントに現地ガイドの目はすごい!!
クリオネはテレビなんかで見るよりも100倍カワイイし癒されますよ。
他には流氷の海というと無機質なイメージがありますが結構マクロ生物もたくさんいて面白いんです。
地面に転がる石ころを見ているとコクチクサウオが隠れていました!
伊豆方面でも見れるスナビクニンに似ていますね。
色合いが石ころそのもので本当に擬態上手!
お腹の下に吸盤があり、その吸盤で岩に張り付いて生活しているそうです。
他にもツマベニホンヤドカリという寒い地域のヤドカリに出会ったりしました。
本当はオホーツクの名が付くオホーツクホンヤドカリに会いたかったのですが残念ながら会えませんでした。
ウミウシは結構種類がいて、その中でもインパクトがあったのはシロホクヨウウミウシです。
この独特の模様が美しい!
どの生物も普段のダイビングでは見ることのできない種ばかりで新鮮でした!
流氷ダイビングは流氷の織りなす芸術的な景観はもちろん、自分への挑戦、そして知床らしい風景や北の海でしか見れないマクロ生物と様々な楽しみ方ができます。
ぜひみなさんも挑戦して欲しい!
流氷とは
そもそも流氷とは何か?
流氷は海が凍って出来ていると勘違いしている方も多いですが、流氷は川の水が流入して薄まった海水が凍って出来ているんです。
そして凍る過程で塩分がなくなり淡水の氷になります。
海水の凍る温度は-2℃からと海が凍るということは滅多にありません。
この流氷は遠くロシアのアムール川から流れ出た水が凍りオホーツク海を風に流されて知床半島に到達します。
ちなみに北海道沿岸は流氷の到達する最南端です。
流氷の最盛期の2月から3月上旬はオホーツク海一体に流氷が広がり樺太半島まで歩いていくことも出来るとかできないとか!
正直想像以上じゃないでしょうか?
どこまでも真っ白の氷に覆われた世界。
まさに氷の大地と呼ぶにふさわしい光景です。
流氷ダイビングの時期と場所
流氷ダイビングができる場所は北海道の世界遺産知床半島です。 知床半島の西側のウトロという町での流氷ダイビングが安定的で1番主流です。
反対側の羅臼という町でも流氷ダイビングはできますが接岸状況がウトロより安定しないので、絶対流氷を潜りたいという人はウトロの方をオススメします。
ちなみに羅臼はこの時期はオジロワシが見れるウォッチング船や、初夏の時期はシャチのウォッチング船が有名ですね。 この記事の最後にも紹介のリンクを貼っておきますので良かったら読んでみてください。
ウトロの町は知床半島の入り口、オホーツク海に面した場所にある小さな温泉街になります。
港を中心とした街になっています。
1番近くの空港は女満別空港で、そこからレンタカー、バス共に約2時間で到着です。
バスの時刻表は斜里バスの公式HPを見て頂くと良いと思います。
Googleマップを見るとこんな感じ。
女満別空港へは現在は羽田からANA&JALで直行便が1日2本ずつ、ピーチエアラインで成田から1日1便飛んでいて意外と行きやすいんです。
もちろん札幌で乗り換える方法もあります。
空港からの移動手段は雪道に慣れている方は途中でレンタカーがオススメです。
こんな感じのメルヘンの丘や、天まで続く道、網走など絶景ポイントや観光地を多く通ります。
ただ吹雪いてしまったりすると大変危険なのであくまで自己判断でレンタカーかバスを選んでもらうと良いと思います。
僕は今回は天候が良さそうだったので直前に空港のオリックスレンタカーを予約しました。
流氷ダイビングのスタイル
流氷ダイビングはマイナスの水温、頭上が閉鎖された空間、特殊な器材とやはり他のダイビングとは異なる特殊なダイビングです。
流氷ダイビングについても少し知っておくと潜りに行く前に安心ですね!
流氷ダイビングは、流氷の上を歩いて沖に出ます。
その沖に穴を空けてエントリーポイントを作ってダイビングをします。
流氷の上つまり、海の上を歩いていくということ!
これだけでも普段とは違って特別な経験になるので面白い!
流氷をチェーンソー切って穴を空けます。
この穴を開ける場所も非常に大事で岩盤などの地形を把握していないとできないし、氷が厚すぎても穴が開かない。
そして流氷の変化の富む場所でないと水中の美しい景観が見れないそうです。
切った氷を氷バサミで引きげてエントリーポイントを作っていきます。
そのあと薄い氷などを取って完成。
こんなにエントリーまでに準備が必要なポイントは初めて!
この過程を見てるだけでも面白いですね。
上から見るとこんな感じ。 さきほど開けた穴にソリで器材やお湯を運んで完成です。
こうやって毎日ポイント整備をしてくれるロビンソンダイビングサービスのガイドの方々には本当に頭が上がらない。
足跡がたくさんあるのはそれだけエントリー箇所を吟味してとのこと。
ちなみに左下に空いている穴は1日前に使った場所ですが既に氷が張って使えなくなっていました。
また流氷ダイビングは頭上を完全に氷で覆われた状態でダイビングをします。
写真の光が差し込む薄そうな部分も実は分厚い氷で水中から割ることは不可能です。
結構本気で叩いてみましたが全然ビクともしませんでした。
確実にエキジットポイントに帰って来れるようにガイドの方はロープをつけて陸上のサポートスタッフと連携して潜ります。
水深も深くても6mほどで移動範囲もロープの伸びる30m前後までなので頭上閉鎖の環境ではありますが安心して潜れます!
僕は撮影だったため50分近く潜りましたが、基本のダイブタイムは15分〜25分ほど。
圧倒的な流氷の美しさに見惚れ、あっという間に時間過ぎちゃいますよ!
流氷ダイビングの装備
やっぱり流氷ダイビングの装備は気になりますよね!
まずは僕が使ったインナーから紹介していこうと思います。
決してベストなものではないですが、このくらいあれば寒くないといった目安に!
まずドライスーツはモビーズのアクアテックシェル、シェルドライスーツ。
その中のインナーはまず上はヒートテックの極暖を2枚重ね着してその上にヒートベスト(フィッシュアイ社)、下はヒートテックの極暖にフリースパンツ。
その上に繋ぎのダウンのインナーを着ました。
※ヒートテックはドライのインナーとして適さない面もあります。
あくまで参考に。
普段はモビーズのコンフォートプライムを着用していますが忘れてしまい急遽ロビンソンさんにインナーはお借りしたもので潜りました。
比較的思ったことがドライのインナーは繋ぎのダウンのインナーとヒートベストがあれば全然大丈夫だと思います!
ただし足先からかなり冷えてくるので靴下は重ねばき、厚手のものを着用することをオススメします!
レギュレーターは寒冷地仕様のものをレンタル
流氷ダイビングでは通常のレギュレーターでは使用中に凍結する恐れがあるので寒冷地用のものを使います。
日本アクアラングのレジェンドなど寒冷地対応のものをお持ちの方も多いと思います。流氷ダイビング前にはオーバーホールに出すことを推奨されています。
僕は長時間潜ることもあってロビンソンダイビングサービスさん寒冷地仕様のものをレンタルしました。他の器材、BC、フィン、マスクなどは通常利用しているもので大丈夫です!
そして1番大事なのはフードとグローブ!
やはり直接、水に触れる部分の保温が特に大事です!
フードはフルフェイスのアイス用フード、もしくは5mmの厚手のものでフィットするものが良いでしょう。
フルフェイスのフードは慣れるまでが難しいので僕は普通の厚手のフードを使いました。
グローブも5mmの厚手のミトングローブで、フィットして水の入ってこないものを!
とにかく体は寒くないのですが手足が冷えて来て辛い。
グローブとフードには特にこだわった方が良いと思いました!
ただしロビンソンダイビングサービスさんには豊富にレンタルがあるのでそれを借りるのでも良いでしょう!
僕も全部借りて潜っちゃいました。
知床半島ならではのランチも!
もちろん流氷ダイビングに知床まで来たなら知床らしい海の幸を味わいたい。
ツアーの中にランチも含まれていて今回は知床海岸食堂さんでご飯を食べました。
雰囲気のオシャレなモダンな感じのお店!
めちゃめちゃ大きな羅臼産のホッケの干物が本当に美味しかった!
こんな大きなホッケ、都内で食べたら絶対高いですね。
例年は雪の上に張ったテントでBBQや温かいものをイベントのような感じで食べるそうですが、今年は感染予防から食堂でのランチに。
毎年流氷に潜りに行くゲストの方に話を聞くとBBQがとにかく美味しくていいんだよ〜と言う方もいるでリベンジしたい!
ウトロは夕日が美しい街
ウトロは知床半島の西側にある温泉街なので夕日がとても綺麗です!
ここはウトロの街からちょっと知床半島の先端側に移動したプユニ岬という高台なのですが、ここから見る夕日が本当に美しいんです。
この夕日は知床八景の1つ。
オホーツク海、一面に広がる流氷に夕日が沈む光景はこれだけでも見に来たかいがあったと思うほどです!
本当に素晴らしい!
流氷ダイビング後に温泉で体をあたためて、ぜひこの絶景も見に来て欲しい。
おわりに
流氷ダイビングはのんびり気軽に潜れる世界ではない。
自分の持ち得たスキルや知識をフル動員して楽しむ極限のダイビングっだと思います。
しかし、きちんと準備を重ね初めてのマイナスの世界に入った瞬間の感動は何ものにも変え難い魅力があります!
ぜひこの感動を一度味わってみて欲しい。
そしてこの特殊な環境でも僕たちが潜れるように手厚いサポートと環境を整えてくれているロビンソンダイビングサービスさんには脱帽です。
代表の西村さん、そしてスタッフの皆様のプロフェッショナルさは本当にカッコよく頼りになる。
初めての流氷ダイビングだと少し不安に思ってる方も安心して大丈夫です!
全力で楽しんで来て下さい。
取材協力:
ロビンソンダイビングサービス
流氷ダイビングの魅力はYouTubeでも更新中!
同じく知床の魅力はこちらの記事でも紹介!
夏にウトロのクルーズに乗って知床岬の先端まで行って野生のシャチに出会えた話。
ウトロの反対側羅臼町のシャチ観察クルーズの記事になります。
毎年5月〜7月の初夏の時期になると根室海峡には野生のシャチが集まります。
夏の知床も面白いのでぜひ合わせて見てみて下さい!
夏の北海道のダイビングを知りたい人はこちら!