須江の内浦ビーチは関西を代表するダイビングポイントの1つです。
須江・内浦ビーチは北風に強く、海が荒れやすい冬のシーズンにも、ほとんどクローズしない冬の定番ポイントです!
関西のダイバーなら1度は潜ったことあるでしょう。
ただ須江で潜る場合の多くが、
”串本がクローズした時の逃げ場”として。
”アドバンス講習やステップアップの場所”として
が多いのではないでしょうか。
実は、関西ダイバーの方でも須江のダイビングの奥深さ、面白さに気付いていないのではないか?
こんなに面白いポイントが主役じゃないなんてもったいない!
そう思って須江のダイビングの魅力をマクロからワイドまで掘り下げて全力で解説していきます!

この記事は関西ダイバーだけじゃなくて関東ダイバーの人にも是非見て欲しい。
伊豆半島で例えると大瀬崎のような奥深さ!
そして伊豆では珍しい生き物がわんさか出てくるので、この記事を読むと須江・内浦ビーチでダイビングしたくなりますよ!
須江のダイビングは「内浦ビーチ」が定番!

内浦ビーチとは須江で毎年、10月1日〜3月31日までの期間限定でオープンするビーチポイントのことです。
須江は紀伊半島の串本町から橋で渡った紀伊大島にあり、内浦ビーチはその中でも紀伊大島と串本の先端潮の潮岬に囲まれた内海に位置するために非常に穏やかなダイビングポイントです。
そのため冬の時期でもほとんどクローズすることはありません。
須江の位置は地図で見るとわかりますが本州最南端、黒潮の当たる串本町の本当に先端部分にも関わらず、湾の中にあるという非常に面白い場所にあります。
黒潮当たる外洋なのに湾内という独特な環境のせいか、穏やかなのに魚影が抜群なんです。
しかも過去にはタカアシガニが出たりと、何が出るかわからない不思議さと、珍しいマクロ生物もたくさんでるスーパーポイント!
関西では内浦ビーチのことを”スーパービーチ”と呼ぶ人もいます。
須江・内浦ビーチのダイビングの魅力をざっくりまとめると……

エントリーして顔を海につけた瞬間から魚たちに溢れていて、

エントリーしてすぐのゴロタ岩のゾーンではマアジを中心とした魚影、そしてそれを狙う捕食者たちを見ることができ、

下の砂地に降りれば、色とりどりのマクロ生物や生態シーンをじっくり観察することでき、

奥の砂泥域までいくと、須江でしか見れないようなハモやオナガウツボといった変わった生き物に出会える。
この海は本当に初心者から上級者まで楽しめる魅力があると思います。
地形的には非常に簡単で緩やかに深くなる穏やかなビーチです。
堤防の脇からジャイアントでエントリーし、その場所が水深3〜5m前後で、その先には敷石といってゴロタ岩が積まれています。
そのゴロタの先は砂地、そして緩やかに深くなり泥地に変わっていくというポイントです。
須江には多くのダイビングショップさんが訪れますが、現地サービスは須江ダイビングセンターだけです。
須江ダイビングセンターは廃校を利用して作られたサービスなので少し古い感じはありますが、学校の雰囲気がすごくいいし、スペースが広いため快適に過ごすことができます。
須江ダイビングのワイドな楽しみ方

須江・内浦ビーチのダイビングというとマクロが主流になってくるのですが……
ここはあえてワイドからその魅力を紹介していきます。
というのも普通はこんだけ穏やかな海(まるで大瀬崎湾内)だと、魚影は薄いことが多いのですが、内浦ビーチには溢れんばかりのマアジの群れがいます。
しかも流れやうねりがほとんどなく、水深も18m以浅と観察するもの楽だし写真も撮りやすい。
こんな素晴らしい環境、他では滅多にありません!
集まる捕食者たち

もちろん、これだけマアジがいるということは……
それを狙ってたくさんの捕食者たちがやってきます!
今回僕が潜ったタイミングはずっと50cm級のブリが20匹程の群れでマアジを追い回していました。
ブリは普段はゆったり泳いでいて観察しやすいのですが、時たま猛烈なスピードでアタックします。

すると水中は一気に賑やかになり、マアジの群れは逃げ惑い。
ぎゅっと固まります。
これが穏やかなビーチで行われる光景なのかと思うほどダイナミック。
回遊魚のアタックは日本全国多くのダイビングスポットで見ることは出来ますが、こんなに穏やかで誰でも見れる。しかも比較的いつでも見れる場所は内浦ビーチしかないでしょう!
正直この光景だけで1本潜っちゃいました。

他にもハナミノカサゴがゴロタ岩の周りで捕食のチャンスを伺っていました。
ブリと違って動きがゆっくりなので、じっくり撮影することもできるし、自分なりの構図も試しやすいです。
例えば上の写真のように少し俯瞰気味にとって海の奥行きを表現したり、

逆に思いっきり下に回り込んで海の爽やかさを表現したり。
こんなに色々試せるのも穏やかだからこそ成せる技ですね。
深海から上がってくるマトウダイ

少し変わり種でいくと、マトウダイもこのマアジを狙って浅場にやってきます!
マトウダイは須江ダイビングセンターのロゴにもなるくらい、内浦ビーチには多い種類です。
普段は深海に住んでいて冬の時期になると繁殖のため浅場に上がってくると言われていますが、須江ではさらに浅い水深10〜18mで普通に見ることができます。
不器用ながら必死に魚を追い回してるマトウダイはどこか愛くるしくて見ものです。
過去には何十匹という群れで現れたこともあるらしく、そんな光景僕も見てみたいです。
砂地からアジを狙うカスザメ

捕食者は中層だけじゃないです。
砂地からもアジの群れを狙ってやってきます。
内浦ビーチのゴロタ岩周りにはカズザメも多く、目を凝らすと砂の中に埋ているカスザメを見つけることができるでしょう。
大きさは80センチくらいあり、砂から出た姿は迫力満点!
たくさん出る年もあれば少ない年もあるのですが、須江には比較的多く狙って見れるというのは貴重だと思います。
群れと群れが混じりあう光景

内浦ビーチには本当にたくさんの種類の魚が群れています。
さらにその魚と魚の距離が近いので2つの群れを同時に撮ったりすることができます。
この豊富な魚種も見ものの1つです。

たとえば、この写真はマアジとヨスジフエダイが一緒に写っています。
マアジは北海道から九州までの温帯域に生息する魚で、ヨスジフエダイは逆に南に多い熱帯域、亜熱帯域に生息する魚です。
それが同じ画角で写真に映るっていうのも凄い。
意識して見ないと気付かないけど、この黒潮が当たるけど温帯域でもある紀伊半島の特徴的な光景だなと思いました。

他にも普段撮らないようなゴンズイの群れも、背景にマアジやクロムツがびっしりいると、ついついカメラを向けてしまいます。
ゴンズイだけじゃなく、ユカタハタなどのハタ類やクマノミなんかもゴロタにはたくさんいるので、群れとのコラボを狙ってみても面白いかもしれないですね!
砂地に潜むツバクロエイ

砂地や泥地でワイド!?と思うかもしれませんが、さきほど紹介したカスザメしかり、砂地にもワイドで撮れる被写体が隠れていることも!
今回はたまたまですが、砂地に隠れるツバクロエイを見ることができました。
毎回見れる被写体ではないですが、内浦ビーチには個体数が多く探せば見つかることも多いという。

ソフトコーラルが美しい場所も!

これは意外だったのですが、須江にもソフトコーラルが綺麗な場所がありました。
沖合で頻繁にいくエリアではないですが、ロープが2本出ていて、そこにソフトコーラルが生えています。
普段伊豆で潜っている僕からすると、ソフトコーラル超凄い!!とはなりませんでしたが、ワイドのレパートリーとして非常に面白い。
ただ、この2本のロープをどう撮っていいかの答えがまだ出せてなく、みなさんも挑戦して見てください。

あとはエントリーしてすぐの水深1〜3mくらいにもこんな場所がありました!
ソフトコーラルと水面っていうのはまた独特な感じで穏やかな内浦ビーチならではの光景だなと思います。
ということで、ここまでワイドの魅力をこれでもかというほど、紹介してきました。
マクロ派の皆さんはお待たせしました。
須江のダイビングのマクロな楽しみ方

ここからが本番!
須江・内浦ビーチのマクロの楽しみ方を紹介していきたいと思います。
マクロの楽しみ方もたくさんありますが、僕は今回この4つ
・不思議な生き物が多い
・じっくり生態観察
・単純に珍しい生き物が多い
・シチュエーションが豊富
に絞って解説していきたいなと思います。
ここでしか見れない不思議な生き物が多い!

やっぱり須江のマクロ生物で他と圧倒的に違うのはこの泥地の生き物たち。
このウツボは泥地に穴を掘って生活するオナガウツボ!
茶褐色の体にこのシワシワの肌がまるで恐竜みたいでカッコいい!?

初めて水中で見つけた時は、あまりの不自然さに驚いたものです。
遠くから見た時は泥地にでっかい流木でも刺さっているのかと思いました。
このオナガウツボは名前の通り体長が非常に長く大きいものだと全長3mになる個体もいるという。
いつか全身が出ている瞬間を見てみたい。

他にも須江でしか見れない生き物としてはハモ!
ハモって確かに料理としては食べたことあるし、馴染みのある魚だけど、実際に本物の姿を見るのは須江が初めてでした。
こんな恐ろしい、感情のないような目をしているなんて知っていましたか?
見た目はダイナンウミヘビに似ていますが、そのボスって感じで風格すら感じますね。

オナガウツボやハモの周りにいるのがテッポウイシモチ。
なぜだかハモやオナガウツボの周りにいつもいます。
中には口内保育をしている個体もいました!
テッポウイシモチは伊豆とかではスナイソギンチャクに付いてる光景などは見ますが、魚についている光景は初めて見ました。
ビーチならではじっくり生態観察が面白い!

毎日、同じポイントに潜れるビーチならではの楽しみは、じっくり生き物を観察できることですね。
内浦ビーチは生き物の活動をじっくり見るのにも適しています。
潜水時間に制限があるのでハッチアウトや産卵の瞬間を見るのは難しいかもしれませんが、生き物の面白い光景を見るのにはいい。

例えば今年長く見れているのがタコの卵保護です!
この目の横に隠しているつぶつぶが卵です。
岩穴の奥の奥でじっと外を睨みながら卵を守っています。

他にもこんなクリーニングシーンも!
アイゴの幼魚たちが我先にとホンソメワケベラにクリーニングを求めるシーン。
クリーニングされる時の魚のリラックした表情と体色が変わる様子は本当に可愛い。

クリーニングされるのは中層だけじゃなく地面でも。
オドリカクレエビのいるエリアではキタマクラやカサゴたちが次から次へとクリーニングを求めてやってきます。
この場所もキタマクラがひっきりなしに来て大人気でした。
こういうシーンが狙って見れるっていうのも須江ならではですね!
もちろん人気種も登場!

もちろん定番の人気種も見れますよ!
今年はセトミノカサゴが3個体近くに集まっていて、なにやら砂地を賑わしていました。
胸ビレの裏側の青がキレイなので見つけた方は後ろ側から狙って見てほしいです。

他にも砂地には水深17mくらいのエントリーしてすぐのところに、めちゃくちゃ寄れるネジリンボウも!
良いも悪いもダイバーに慣れているので簡単に近くまで寄ることができるし、今回ライトを当てながら撮影したのですが、カメラの最短まで寄ることができました。

他にも去年はハナゴンベのチビが居着いていました。
伊豆ではなかなか見れないので関東ダイバーからすると、めちゃくちゃ嬉しい!

そして定番といえばハナイカ!!
ハナイカは串本では卵まで見れるし、そんなに珍しくないかもしれませんが、伊豆では絶対見れないので関東ダイバーからすると、めちゃくちゃ感動する!
ぜひ、その体色の変化する様子を生で見てほしいものです。
面白いシチュエーションで撮れることも!

シチュエーション選びは感性にもよりますが、
須江にもたくさんのシチュエーションがあります。
お気に入りのシーンがきっと見つかると思います。

こういうシチュエーション選びは須江の海に詳しいガイドさんと潜るか、自身も一眼などのカメラをやるガイドの方と潜ると、いろいろ紹介してくれると思います。
ちなみに僕は須江は毎回、須江ダイビングセンターの坂口さんか、神戸のショップso blue dvers須磨の松井さんと一緒に潜っています。

他にも魚と魚の距離が近いので、
ワカウツボを手前にミツボシクロスズメダイを添えてみたり。
今回僕は105mmのマクロレンズで撮影しましたが、ワイドマクロみたいなレンズや少し画角が広めのレンズで撮影しても楽しそうですね。

須江には一見何もなさそうな砂地やゴロタ岩が広がっています。
しかし、そこを探すとたくさんの小さな生き物たちに溢れている。
穏やかで講習をやるにも最適な海だからこそ、こういう何気ないところに隠れる生き物たちを大切に潜っていきたい。
夏はボートダイビングでネコザメ祭り

ここまで内浦ビーチの魅力を語ってきましたが、内浦ビーチは10月1日から3月31日までの期間限定ポイントです。
それ以外のシーズンはと疑問に思った方もいるかもしれません。
夏の時期は須江のダイビングはボートがメインになります。
その中でも特徴的なのがイヌカの浜というポイントで、ここには数えきれないくらいのネコザメがいるんです!
それこそ1ダイブで20〜30個体は見れます。
恐らく日本で1番ネコザメが見れる海ではないでしょうか?

時にはこんな手のひらサイズの小さなネコザメも!
ボートではありますが地形自体はフラットな砂地にネコザメが大小たくさんいて初心者から楽しめると思います。
夏の須江はお世辞にも透明度がいいとは言えませんでしたが、またこのグリーンも須江らしくていいかなと思います。

そしてボートポイントではナギザキがメインのポイントになります。
ナギザキは約水深30mからそびえたつ大きな根で、その周りで様々なマクロ生物を見ることができます。
毎年春先にはオキノスジエビの大群が出ることでも有名です。
須江は夏になると逆にダイバーが減るという面白いポイント。
逆に夏でもじっくり写真が撮れるので、フォト派の方は夏もすごくいいと思います。
おわりに

やはり須江のダイビングの面白いところは、すごく穏やかなのに魚影がすごく内海と外洋らしさの両方を兼ね揃えているところ。
エントリーした瞬間から魚に溢れ、エキジット直前までマクロでもワイドでも楽しめること。
そこに更にスペシャルな生き物や、魚が面白い生態行動を魅せてくれる。
スーパービーチにふさわしいポイントだと思います。
個人的にはシンプルな砂地が広がる海だからこそ、
自分で工夫をして色を出したり、構図を意識したりと、
自分らしさを写真で表現しやすい海だと思います。
毎年、この海に潜りながら、自分の成長や表現方法を確認していこうと思います。
須江は僕の関西のホームグラウンドです!
ちなみに僕の伊豆のホームグラウンドは大瀬崎です。
関西の人は潜ったことないという方も多いと思いますので、ぜひ見てくださいね!!
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